氏名変更相談センターでは、「名前の漢字が正字になっているのですが、過去に使用していた字に戻せないですか?」というようなご相談を頂きます。

実際に、もともと使用していた文字に変更することは可能なのでしょうか?

誤字・俗字・正字の意味

まず、それぞれ言葉の意味を抑えておきましょう。

誤字の意味

日本の戸籍は、当初手書きであり、文字についての決まりがなかったので、戸籍担当者の字の癖や、記載ミスなどによって、辞書にない文字が生まれるようになりました。

このような本来の正しい字でない字を「誤字」といいます。
誤字には、もともとの正字が分からないため、戸籍に誤字で記載されている方もいらっしゃいます。

俗字の意味

俗字とは、もともと誤字であったものが、多くの人に使用されたため、一般的に使用されることになった文字のこといい、漢和辞典にも「俗字」として登録されているものもあります。

正字の意味

正字とは、常用漢字表などに掲載されている正しい文字を言います。
もともと俗字であったものが、正字として扱われるようになったものもあります。

戸籍上の誤字・俗字の取り扱い

戸籍に誤字・俗字があった際は、どのように扱われるのでしょうか?
時代によって、その取扱いは違いました。

過去の取り扱いを見ていってみましょう。
大きく分けて次のように分類することができます。

戸籍の取り扱い

①昭和25年~平成2年
申出のない限り、誤字・俗字はそのまま記載する取扱い

②平成3年~平成6年
戸籍の変動(婚姻等)があると、誤字・俗字は正字に変更される取扱い
※5200号通達

③平成6年~現在
戸籍の変動があると、誤字は正字に変更され、俗字はそのまま記載される取扱い
※5200号通達の変更

具体的に、「髙」橋和夫さんと山田和子さんが、結婚し、「髙」橋の姓を名乗っていく場合を例で見ていってみましょう。

①昭和60年に結婚をした場合、「髙」橋の「髙」は、俗字のまま新戸籍が編製されます。

②平成4年に結婚をした場合、「髙」橋の「髙」は、正字の「高」として新戸籍が編製されます。

③平成10年に結婚をした場合、「髙」橋の「髙」は、誤字ではなく俗字なので、「髙」橋の「髙」は、俗字のまま新戸籍が編製されます。
正し、申請をすれば、正字の「高」に変更することも可能です。

このように、結婚、養子縁組、転籍等いつ戸籍の変動があるかで、俗字・誤字が自動的に変更されるかどうかが変わってくるのです。

つまり、戸籍の文字がいつの間にか、正字になっていたという人は、戸籍の変動があった際に、変更されてしまった可能性があるという事です。

但し、市町村長が誤字・俗字を正字に改める場合は、原則(※)として、当事者等に告知する必要があり、この告知を怠ったために、市町村長が違法な記載をしたとして、元の文字に戻すことを許可した判例もあります。
※例外的に、戸籍の変動のもととなる婚姻届出等の際に、「正字」で署名等をしている場合は、告知は不要になります。本人が正しい字を自覚しているからです。

下記の判例は最近のものですが、昔は、取り決め通りに対応していない役所もあったようで、いつのまにか変更されているものもあったようです。

戸籍事務のコンピュータ化に伴う戸籍改製に際し、市町村長が氏名の誤字を正字に改める場合において、事前に本人に対し書面により告知する手続を省略し、表記の訂正を欲しない旨の本人の申出を無視して訂正するなど、本人にそのままの表記で公証される機会を与えたといえないときには、戸籍法118条にいう違法な戸籍の記載がされたものとして、もとの表記への戸籍訂正を許可することができる。

平成19年7月19日/鹿児島家庭裁判所知覧支部/審判/平成19年(家)175号

誤字・俗字を正字へ変更する場合

まず、誤字・俗字を正字に変更するにはどのような手続きが必要でしょうか。

誤字・俗字を正字に変更するのは、市役所での手続きのみで変更をすることができます。手続き自体は本籍地の市役所でされますが、受付や書類の書き方などの相談はお近くの市役所でも対応しております。

なので、本籍地が遠方の方は、郵送で本籍地の役所に申請をするか、お近くの役所で受付をしてもらいましょう。

名前を変更する際には申出書には、そのお名前を変えたい方だけの署名で問題ありませんが、氏を変更する際には申出書には、戸籍の筆頭者とその配偶者の署名が必要です。

添付書類は本籍地の市役所であれば、申立書のみ提出をします。

​本籍地以外の市役所で手続きをする場合は、申立書に戸籍謄本が必要となって参ります。

本籍地で手続きが終了すれば、戸籍に記載してある内容はもちろん、住民票での記載内容も変更されます。

申立書
鹿嶋市の申立書

正字から誤字・俗字に変更する場合

まず、誤字については、人名に使える漢字ではないため、原則誤字への変更は認められません。

正字から俗字に変更されたい場合、方法は2通りあります。

俗字に変更する方法

①家庭裁判所の許可を得て、変更する
② 市区町村長への更正申出によって変更する
(平成6年度の通達により、職権更正された方)

①家庭裁判所の許可を得て、変更する

名前を正字から俗字に変更する場合は、原則、家庭裁判所による手続きが必要となります。

この場合は、本来の氏・名を変更する家庭裁判所への変更手続きをし、「やむを得ない」「正当な」事由があると認められれば、変更をすることができます。

詳しい家庭裁判所の手続きについては、こちらをご参考下さい。
氏・名の変更のお手続きの流れ

② 市区町村長への更正申出によって変更する

平成6年の通達によって、俗字から正字に職権で変更された方は、市区町村への申出によって、俗字に更正することが可能です。
例えば、「𠮷」田さんという方が、「吉」田という正字に職権で更正されていた場合は、更正申出によって変更することが可能です。
ただし、ここで名前を変更できる方というのは、過去に俗字で、職権で更正された方が対象になります。

正字のみを利用されてきた方が、俗字へ変更するには、①の家庭裁判所の手続きを取る必要があります。

認められた判例・認められなかった判例

過去の判例を見ていくと、基本的に正字から俗字への変更は厳しい扱いとなっています。

認められた判例

戸籍事務のコンピュータ化に伴う戸籍改製に際し、市町村長が氏名の誤字を正字に改める場合において、事前に本人に対し書面により告知する手続を省略し、表記の訂正を欲しない旨の本人の申出を無視して訂正するなど、本人にそのままの表記で公証される機会を与えたといえないときには、戸籍法118条にいう違法な戸籍の記載がされたものとして、もとの表記への戸籍訂正を許可することができる。

平成19年7月19日/鹿児島家庭裁判所知覧支部/審判/平成19年(家)175号

氏名の俗字又は誤字を正字で記載する取扱いは、常に単なる表記の訂正にとどまり、氏名の変更に当たらないとはにわかに断定し難く、この取扱いに伴う氏名表記の変更により社会生活に多大の影響を受けることがあり得ることからすれば、戸籍事務の能率的処理の要請があるとしても、この取扱いを是認する明文の根拠規定がないのに、本人の意思や事情のいかんを問うことなく、一律かつ一方的に氏名に含まれる俗字又は誤字を正字に改めることは許されないというべきである。 戸籍事務管掌者が婚姻による入籍の記載をするに当たり事前に本人の同意を得ることなくその名「★子」を俗字であるとして正字「廣子」に訂正したことは許されないとして、元の字への改名が認められた事例。

平成4年12月21日/東京家庭裁判所/審判/平成3年(家)13508号

認められなかった判例

もともと戸籍上「★(タカ)山」という、誤字ないし俗字を用いて記載さていた氏が、過去のある時点で正字の「高山」に改められている場合に、その氏をもとの「★(タカ)山」に変更することを求める氏の変更申立が却下された事例。

昭和63年2月24日/富山家庭裁判所/審判/昭和62年(家)947号

氏のなかに俗字または誤字である「★(クワ)」の字が含まれていることから、これを「桑」の字に訂正のうえ婚姻の届出をし新戸籍を編製した者が、同一敷地内に居住する弟家族と氏が異なることは不自然であることなどを理由に旧氏への氏の変更許可を求めた事案について、右のような俗字または誤字を含む氏への変更は原則として戸籍法107条1項の「やむを得ない事由」があるとはいえないと解すべきところ、かかる原則の例外を認むべき事情は認められないとして右申立が却下された事例。

昭和57年7月27日/熊本家庭裁判所人吉支部/審判/昭和57年(家)105号

まとめ

​正字から俗字にお名前を変更することは、家庭裁判所の許可が必要となり、労力が必要となってきますが、誤字・俗字から正字に変更する際は市役所での手続きだけで済みますので、比較的に簡単にできます。

ただ一度旧字・俗字から正字に変更すると家庭裁判所の許可手続きを経ないと旧字・俗字に変更できなくなりますので、よく検討をして手続きをしましょう。

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