どうすれば名前の変更ができるの?

精神的苦痛を理由に名前を変更するにはどうすればいいのでしょうか?

​精神的苦痛を理由に名前を変更する場合には、家庭裁判所の許可を得た後、市役所へ届出を提出することにより氏を変更できます。

お名前変更の細かな流れについては「苗字・名前の改名手続きを徹底解説」をご参考ください。

どのような理由だと変更できるの?

精神的苦痛を理由に名前を変更するにはどのような場合、変更が認められやすいのでしょうか。

精神的苦痛のみを理由として改名の許可を頂くのはなかなか難しいものとなりますが、過去の判例では次のような場合、名前の変更が認められております。なお、これらの理由があったとしても確実に変更の許可が出るというわけではありません。

改名許可された理由

・親から幼少時に暴力行為、性的虐待などを受けた場合
・性同一性障害者が、戸籍上の名前を変更する場合

どんな証拠を準備したらいいの?

診断書

暴力や虐待を受けていたことが分かる資料があることで、客観的にその被害が事実であることが証明できるため、変更の許可が上がる可能性があります。またそれらを理由に病院などに通っている場合、診断書を提出することが有効です。診断書の内容は特段形式を問わず、例えば単純なうつ病と診断された簡易なものやDSM-5、ICD-11などの診断基準が記載された診断書なども証拠資料となります。またうつ病などの精神的な病気だけでなく身体的に障害をおった診断書なども資料となります。

通称名資料

一般的な証拠資料として通称名資料も有効です。通称名を長年使用することで、変更許可の可能性が上がります。

通称名については「通称名とは?」をご参考下さい。

改名許可された判例

精神的苦痛のみを理由として改名が認められた判例で公になっているものはほとんどありません。
次の内容は、貴重な過去、精神的苦痛を理由として改名許可がおりた審判書の内容です。

主  文
申立人の氏を「増村」と、名を「みつこ」と変更することを許可する。

理  由
1 本件申立の要旨
 申立人は、幼いころ近親者から性的虐待を受けたことが原因で、その近親の血縁集団に属することが耐えがたい精神状態になっている。
 よって、その血縁集団の呼称としての性格も有している申立人の氏及び氏と一体となって血縁集団への帰属を反映する名を、申立人が通称として使用して来た「増村みつこ」に変更することの許可を求める。

2 当裁判所の判断
 本件記録添付の各資料、家庭裁判所調査官○○、○○、○○作成の調査報告書及び申立人審問の結果によれば、以下の事実が認められる。
(1) 申立人は、戸籍筆頭者であり、同一戸籍には前夫との間の長女あずさ(昭和58年1月6日)がいる。
(2) 申立人は、小学生当時に実兄から継続的な性的虐待を受けたが、その被害の影響が申立人の心に深く、長期間にわたって残り、そのことを想起することにより、強い心理的苦痛を感じ、激しい感情的変化や外界に対する鈍化や無力感といった生理的反応を示すようになった。
そして、現在までに2度結婚したがいずれも離婚し、その間、一時は就職して働いたこともあるけれども、精神的に安定した生活を送ることができず、現在は定職に就いて働くことも困難な状態で、完全な社会復帰ができないでいる。
(3) 申立人は、戸籍上の氏名で呼ばれることに強い抵抗を示すが、申立人にとって戸籍上の氏名で呼ばれることは、同じ呼称である加害者をそして被害行為を想起せしめ、強い精神的苦痛を感じることに因る。
(4) 申立人がその氏名の変更を求める理由は、加害者ひいては被害行為を想起せしめる氏と、忌まわしい子供時代を象徴する名前とを変更して、被害行為を過去のものとし、いわばその呪縛から逃れて新たな生を生きたいと考えてのものである。
(5) 申立人が変更を求める氏の「増村」は、申立人が感銘を受けた映画の監督の氏に因んでのものであり、名の「みつこ」は人生の歩みを示す「○○」からとったものである。
そして、申立人は、平成4年秋ころから、氏名として「増村みつこ」を表札にも表示して使用して来ており、長女の学校の関係でも「増村」を使用している。
上記認定の事実によれば、申立人が自己の氏名の変更を求める理由は、珍奇であるとか難読・難解であるとか、あるいは社会的差別を受けるおそれがあると言った社会的な要因を理由とするものではなく、主観的なしかも極めて特異な事由(本件記録添付の資料によると、申立人の上記のような心理状態は、心理学的に見てあり得ない事象ではないことが推認される)である。

しかしながら、主観的事由ではあるけれども、近親者から性的虐待を受けたことによる精神的外傷の後遺症からの脱却を目的とするものであり、氏名の変更によってその状態から脱却できるかについて疑念が残らないでもないけれども、上記認定の事実に照らせば、戸籍上の氏名の使用を申立人に強制することは、申立人の社会生活上も支障を来し、社会的に見ても不当であると解するのが相当であると言える。
 以上により、申立人が氏を変更するについて、戸籍法107条1項の「やむを得ない事由」があるものと認めるのが相当であり、また名の変更についても、単なる好悪感情ではなく上記のような事由に基づくものであること及びその使用年数等を併せ考えると、同法107条の2の「正当な事由」があるものと解するのが相当である。
 よって、申立人の本件申立はいずれも理由があるから、これを認容することとし、主文のとおり審判する。

平成9年4月1日/大阪家庭裁判所/審判/平成8年(家)574号/平成8年(家)575号

どのような理由だと変更できないの?

精神的苦痛を理由に名前を変更するにはどのような場合、変更が認められにくいのでしょうか?

精神的苦痛を理由に名前を変更するには次のような事情があった場合、過去の判例から名前の変更が認められにくいものと思われます。なお、これらの理由があったとしても確実に変更の許可が出ないというわけではありません。

改名却下された理由

・主観的な苦痛であること
・嫌悪、好んでいないだけの理由の場合
・自分の都合のいいように、強引に理屈がこじつけられている場合

例:「武平という名前が肛門から放屁一発する「ぶつ」「屁」に似て不潔な臭気を連想するため社交上も支障がある」という理由について、裁判所は「牽強附会(自分の都合のいいように、強引に理屈をこじつけること)も甚だしい議論である」と判断した。

精神的苦痛の原因が客観的に判断できる事実や事件ではなく、本人の主観性でしか判断できない場合は認められにくくなっております。

却下された判例

※判例の一部を抜粋

戸籍法107条の2の改名についての「正当な事由」のある場合とは改氏についての「やむを得ない場合」よりは幅の広い解釈を採りえられるとしても、単に改名に伴い第三者に影響を及ぼさないという消極面だけでは足りず、さらに一歩を進めて改名の必要性の存在を要求するものと解せられる。通名の永年使用という事実があつても、この通名へ変更した動機がもつぱら易判断による母親の主観的感情に基づく場合には、改名の必要性がない。

昭和36年12月9日/高松家庭裁判所/審判/昭和36年(家)646号

「武平(ぶへい)」という名に対する主観的な好悪の感情に基づく改名の申立は、名の変更についての「正当な事由」がある場合に該当しない。

昭和35年9月17日/東京家庭裁判所/審判/昭和35年(家)8052号

「馬茂(うましげ)」という名は必ずしも珍奇・低俗な名ではなく、またこの名のために社会的信用がそこなわれるとは認めることができないから、本人の主観的な苦痛を考慮にいれるとしても、いまだ名の変更について「正当な事由」があるものということはできない。

昭和35年6月11日/高松高等裁判所/決定/昭和35年(ラ)36号

このように精神的苦痛を理由に名前を変更する申立は検討すべき点は多々あります。裁判所に何を伝えるかで変更の許可が認められるかどうか変わって参ります。

精神的苦痛を理由に、氏・名の変更を申し立てされようと考えられている方は是非、氏名変更相談センターにご相談ください。

 

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