「親からひどい虐待を受けている」
「親と関わらずに生活をしたい」
「毒親から性的な行為を強要されている」
様々な理由で親と縁を切りたい方は、たくさんいらっしゃると思います。
親と縁を切るということは、社会的に良く思われないことが多いかもしれませんが、ご自身の生活や身の安全のためには、時には必要なことでもあります。
このような方々が、実際に親と縁を切っていくためにはどうしたらいいのでしょうか?
また縁を切るために改名するにはどうしたらいいのでしょうか?
この記事では、「できる限り親と関わらないよう生活していくには、どのような対策があるのか?」について解説しております。
※該当される方は次の記事もご参考下さい。
「精神的苦痛を理由に改名するには?」
目次
「親と縁を切る」とは?
親と縁を切りたい方は多くいらっしゃいますが、そもそも縁を切るとは、親とどういう関係になりたいのでしょうか。
ここでは、親と縁を切るということを「今後親とは関わらずに生活をしていくこと」という意味合いでご案内させて頂きます。
結論から申し上げますと親と法律上の縁を切るのは難しく、生活をしていくうえでできる限り親と関わらないように対策をしていくしかありません。
法律上、親と縁を切る方法は?
先ほども申し上げた通り親と法律上縁を切るのは、とても難しいです。
方法としては次のようなものがございます。
法律的に親との関係を断つ方法
・親子関係不存在確認の訴えを行う
・特別養子縁組を行う
親子関係不存在の訴えとは?
親子関係の不存在とは、実際に父親と子どもが本当の親子の関係ではなかった際にする訴えの事をいいます。
例えば、子どもが母親との浮気相手の間にできた子どもなどであった場合です。
この手続きを実際に行う場合、父親と子どもに血縁関係がないことを客観的に科学的に証明する必要があります。
特別養子縁組とは?
特別養子縁組を行うことによって、養親が戸籍上「父母」になり、養子も戸籍上養親の「長男」「長女」というと記載され、もともとの親との親族関係は終了します。
なので、元々の親とは親権や相続関係も無くなります。
ただし、この手続きの条件の一つとして、次の条文があります。
第817条の2に規定する請求の時に六歳に達している者は、養子となることができない。ただし、その者が八歳未満であって六歳に達する前から引き続き養親となる者に監護されている場合は、この限りでない。
民法817条の5
つまり、養子が特別養子縁組の請求時に6歳未満であること、または、養子が8歳未満であり6歳未満の時から養親となる者に監護されていることとされているので、現実的に親との縁を切ろうとされているほとんどの方が該当しないものと思われます。
ですので、実際に法律上親子関係を切るというのは、難しいのです。
それでは、法律上縁は切れないにしても、生活をしていくうえで、できる限り親と関わらずに生活をしていくにはどのような方法があるのでしょうか?
生活上、親と縁を切るには?
それでは、具体的に親と縁を切るには、どのような方法があるのでしょうか?
具体例を紹介します。
生活上、親との関係を断つ具体策
・住民票等の閲覧・交付の制限を設ける
・親の知らない場所へ引っ越しをする
・携帯電話の番号を変える
・職場を変える
・SNSなどのアカウントを変更する
・別の名前で生活をする
・戸籍を分籍する
・戸籍上の名前を改名する
このように社会生活をするうえで、親とコミュニケーションをとらない方法として、様々な具体的な方法があります。
分籍については「分籍とは?親の戸籍から抜ける方法」「分籍や転籍など様々な手続き後の戸籍の見本」をご参考下さい。
この記事では、「住民票等の閲覧・交付の制限を設ける」「戸籍上の名前を改名する」について詳しく解説をします。
住民票等の閲覧・交付の制限を設ける
毒親から暴力を受けていたり、お金を無心されたりするために、引っ越しをし、身元を隠しても、親が住民票・戸籍の附票を請求し、現在の住所地が判明してしまうとせっかく引っ越しても意味がなくなってしまいます。
そのような親から身元を判明されないように、住民票・戸籍の附票の閲覧・請求に制限を設けることができます。
なお詳しい内容については、総務省の記事もご参照ください。(総務省HP)
住民票等の閲覧制限の申立先
申立先は次の通りです。
・住民票の制限
…住民票のある市区町村役所
・戸籍の附票の制限
…戸籍の附票のある市区町村役所(戸籍の附票とは?大阪市役所HP)
なお、引っ越しをされる際は、その転入届出と一緒にする必要があります。
詳しい手続きの流れは、それぞれの市区町村役所に問い合わせてみましょう。
住民票等の閲覧制限の期間
支援措置の期間は、申し立てをしてから永久に続くわけではなく、閲覧制限の結果を申出者に連絡した日から起算して1年のみ有効です。
期間を延長する場合は、期間終了の1か月前から、延長の申出をすることで延長することができます。
延長後の期間は、延長前の期間の終了日の翌日から1年間有効となります。
戸籍上の名前を改名する
戸籍上の名前を改名し、親から身元を隠すという方法もあります。
改名することで、実際に親から見つかりにくくなるだけでなく、過去の出来事やトラウマなどから、精神的に親との関係を断ち切るため改名される方もいらっしゃいます。
それでは、戸籍上の名前を改名するには具体的にどのようにすればいいのでしょうか?
改名に必要な手続き
名前を改名するにはどうすればいいのでしょうか。
名字、名前を改名するためには家庭裁判所で「氏の変更許可申立」または「名の変更許可申立」をして、家庭裁判所の許可を得る必要があります。
詳しい手続きの流れについては氏・名の変更のお手続きの流れをご参考下さい。
どういった場合、許可されるの?
親との関係を断ちたいという理由だけでは、名前を改名する許可はおりにくいです。
もちろん、親との関係を断ちたくなった具体的で客観的な事実は、裁判所に対して主張することは重要ですが、通称名の実績がない状態では、許可はなかなかおりません。
※通称名については、こちらをご参照ください。
通称名へ改名するには?実績資料など名前変更で大事なポイントを解説
ですので、家庭裁判所への申立は、ある程度、通称名の実績が積まれてからということになります。
それでは、通称名の使用実績を積んだ後に、申立をした際、家庭裁判所に対しては、どのような事実を伝えていけば、改名の許可は下りやすいのでしょうか。
改名の申立てが許可されるかどうかは次の観点から判断されます。
1.改名の動機が正当であり、必要性は高いか
2.改名による社会的影響は低いか
つまり、「いかに正当で必要性が高く、社会的に悪影響を及ぼすことがない」ことを伝えていく必要があります。
具体的には次のようなものが理由としてあげられます。
改名許可を得るために伝えるべき事実
・親と子が関係を断つ必要がある具体的事実
(例:家庭内暴力、性的行為等)
・親と子の関係がある事によって支障をきたしている事実
(例:職場に迷惑がかかっている、借金の催促が来ている等)
・通称名の使用実績がある
・キラキラネームなど特徴的な名前である
(例:王子様等)
改名に必要な書類は?
改名手続きに必要な一般的な書類(申立書、戸籍謄本等)については氏・名の変更のお手続きの流れをご参考下さい。
親と縁を切りたい場合、いかに改名をする必要があるのかを裏付ける証拠資料が必要となります。
証拠資料として提出するものには次のようなものがあります。
改名許可を得るために提出する書類
・親から家庭内暴力、性的行為を受けていたことが分かる書類
(診断書、けがの写真など)
・親との関係で支障をきたしていることが分かる書類
(会社からの苦情の書類、保証人になっている契約書など)
・過去の被害についての経歴書
(いじめ、通院記録など)
・通称名を使用している証拠資料
裁判所においては、申立理由だけでなくその事実を裏付ける証拠が重要となってきますので、できる限りのものを提出致します。
却下されてしまった場合の対応
万が一申し立てが却下されてしまった場合は、どうすればいいのでしょうか?
方法としては次の方法があります。
詳しい内容については、こちらの記事をご覧ください。
改名を取下げるべき?却下された場合は?
・却下の判決をうけてから2週間以内に即時抗告の申立てをする方法
・通称名の実績を積み上げて再度申し立てる方法
却下の判決をうけてから2週間以内に即時抗告の申立てをする方法
家庭裁判所が改名の申立てについて却下をした場合、却下判決に不服がある場合、不服の申立て(即時抗告)をすることができます。
即時抗告をした場合、一旦、審判を下した家庭裁判所が審査します。明らかな間違いなどがあった際には、審判を変更する場合があります。
審判を下した家庭裁判所の判断に変更がない場合、高等裁判所で審査をした後、許可、不許可の審判を下します。
通称名の実績を積み上げて再度申し立てる方法
却下の判断がされた後、通称名で使用実績を積んでから再度、名前の変更許可の申立てをすることが可能です。
使用実績を3年ほど積まれた後に、再度申し立てをすることをお勧めします。
まとめ
親と縁を切るというのは、様々な点を考えなければなりません。
常に親が悪いわけでも子が悪いわけでもないため、縁を切る必要があるかどうかは、慎重に考え、信頼できる人、尊敬できる人に相談する必要もあります。
そのうえで、親と関係を切っていくという決断をされた方が、この記事を読まれて少しでもご参考になったのでしたら幸いです。