・現在、二重国籍となっているので国籍を一つにしたい


・二重国籍の夫の日本の苗字を変更したい


・国籍喪失していると思ったら日本の国籍が残っていた

 

弊所では、二重国籍の方が夫、妻の苗字に変更したいという相談を頂くことがあります。

このような二重国籍となっている場合の国籍の選択方法や苗字の変更手続きはどのように行うのでしょうか?

この記事は、二重国籍の際の国籍の選択方法、苗字、名前の変更手続きを記載しております

※改名に関する次の記事もございます。ご参考下さい。
国際結婚した夫婦の苗字・名前を変更するには?
日本に住む外国籍の方が名前を変更するには?
日本人の子供が外国の親の苗字に変更する方法
外国人の養子になった日本人の苗字・名前の変更方法

二重国籍とは?

二重国籍とは、二つの国籍を持っている状態のことをいいます
二つ以上の国籍を持っている場合、多重国籍、重国籍と言われることもあります。

原則:日本で二重国籍は認められていない

日本では、原則、単一国籍である必要があります。(国籍法14条1項)

そのため日本国籍と外国籍の2つ以上の国籍を持つ人は、次の期限までに国籍を選択する必要があります。

国籍選択の期限

①18歳以前に多重国籍となった場合
…22歳になるまで

②18歳以降で多重国籍となった場合
…多重国籍となってから2年以内

※2022年4月1日から、成人年齢が20歳から18歳に引き下げられました。それにより2022年4月1日の時点で18歳、19歳の方は、この日に成人したことになり、2024年3月末までにどちらかの国籍を選択する必要があります。

期限までに国籍を選択しない場合、法務大臣から国籍選択の催告を受け,場合によっては日本の国籍を失うことがあります。

例外:実際には多くの二重国籍者が存在している

しかしながら日本では、原則単一国籍であることを国籍法で定めていますが、実際には多くの人が二重国籍の状態となっており、その人数は数十万人にのぼると言われております。(参照:参議院HP資料

それではどのような場合、二重国籍となるのでしょうか?

二重国籍にならないケース

まず先に二重国籍にならないケースをお伝えします。

日本国籍の人が、自分の意志で外国籍を取得した場合、日本国籍と外国籍の二重国籍とはならず、当然に日本国籍を喪失します
。(国籍法11条)

日本の国籍を喪失した場合、日本の役所や日本大使館、総領事館に「国籍喪失届」を提出する必要がありますが、その届出をしていなくとも、外国籍を自分の意志で取得した段階で実体的には、日本国籍を喪失します。
届出をしなければ、日本の役所等が外国籍を取得したことを知ることが困難なため、日本のパスポートを持っていたり、戸籍に自分の名前が残ったままになっているかもしれませんが、実体的には日本国籍はなく、外国人としての扱いとなります。

日本国籍を喪失した後に、再度日本国籍を取得する場合、帰化申請の手続きが必要となります

二重国籍になるケース

それでは二重国籍となるのは、どのようなケースなのでしょうか?

①国籍の異なる親の間に生まれた子供

中国人と日本人との間に生まれた子供の場合、その子供は中国籍と日本国籍を取得し、重国籍となります。
このように親の国籍を承継する方式を血統主義といい、中国、オーストリア、オランダ、タイなど様々な国がこの方式を採用しています。
ただし、中国では親の居住地が中国ではなく、子供が中国籍以外の国籍も取得する場合には、親の中国籍を承継できないなど、国によって血統主義でも親の国籍を当然に承継できない場合がございます。

出生により日本国籍を取得する重国籍者は、出生から3か月以内に国籍留保届を提出しない場合、日本国籍を喪失してしまいます
国籍留保届は出生届の中にその記載欄がございます。

出生地主義の国で出生した子供

アメリカ、カナダ、アルゼンチンなどの国にいるときに出生した場合、出生した国の国籍が付与されます。このような方式のことを出生地主義と言います。
日本の親がアメリカなどで子供を出生した際には、子供はアメリカと日本の国籍を取得し二重国籍となります。

③外国人と結婚し国籍を付与された場合

日本人の女性がエチオピア、イラン、サウジアラビアなどの国の男性と結婚した場合、結婚した相手の国籍を自動的に取得することになり、二重国籍となります。
また日本人の女性がパキスタン、タイ、エジプトと結婚した場合、届け出をすることで相手の国籍を取得できますが、先ほども記載しましたが、自分の意志で国籍を取得する場合、日本国籍を喪失します
そのため、自動的に国籍を取得する場合は二重国籍となりますが、届出によって相手の国籍を取得する場合、二重国籍とはなりません。

④外国人が日本に帰化しても国籍を喪失しない場合

アメリカやロシアなどは、日本と異なり外国籍を自分の意志で取得しても当然に国籍を失うわけではありません。
そのため、ロシア人などが日本国籍を取得する帰化申請などをした場合、その人はロシアと日本の二重国籍となります。

国籍を選択する手続き

日本国籍を持つ多重国籍者が国籍を選択する際に、必要となる手続きを説明します。

日本国籍を選択する場合

多重国籍の人が日本国籍を選択する際に必要となる手続きは次の通りです。

日本国籍を選択する手続き

①外国にて国籍の離脱手続きを行う
②日本の役所に、外国国籍喪失届、国籍選択届を提出する

①外国にて国籍の離脱手続きを行う

日本国籍を選択する場合、まず①の手続きが必要となります。
①の手続きで発行される国籍離脱証明書を②の手続きで提出する必要があります。

アメリカでの国籍離脱の方法は「米国籍の喪失/離脱」をご参考頂き、外国での国籍離脱の手続きは、自国の取扱機関にご確認ください。

②日本の役所に外国国籍喪失届、国籍選択届を提出する

①の手続きが完了した後、日本の役所に外国国籍喪失届、国籍選択届を提出する必要があります。

外国国籍喪失届
外国国籍喪失届
外国国籍喪失届について

提出先
…本籍地または住所地の役所

手続きの期限
…外国国籍喪失の事実を知った日から1か月以内
※事実を知った日に国外にいるときは3か月以内
 
必要な書類
…外国国籍喪失届書、外国国籍の喪失を証明する書類、外国語で作成されている書類の訳文、認印
※本籍地以外の役所で手続きをする際は、戸籍謄本が必要となる場合がございます。

費用
…無料

備考
…届出書には本人(15歳未満の際は法定代理人)に記入頂く必要がありますが、役所によっては郵送、本人以外で提出できる場合がございます。

外国国籍喪失届の用紙はこちらからダウンロードできます。

国籍選択届
国籍選択届
国籍選択届書について

提出先
…本籍地または住所地の役所

手続きの期限
18歳以前に多重国籍となった場合
…20歳になるまで

18歳以降で多重国籍となった場合
…多重国籍となってから2年以内 

必要な書類
…国籍選択届書、認印
※本籍地以外の役所で手続きをする際は、戸籍謄本が必要となる場合がございます。

費用
…無料

備考
…届出書には本人(15歳未満の際は法定代理人)に記入頂く必要がありますが、役所によっては郵送、本人以外で提出できる場合がございます。

国籍選択届の用紙はこちらからダウンロードできます。

詳しい内容は各役所によって異なる場合がございます。お手続きをされる方は事前に管轄の役所にご確認ください。

外国籍を選択する場合

多重国籍の人が外国籍を選択する際に必要となる手続きは次の通りです。

外国籍を選択する手続き

①外国にて必要な手続きを行う
②日本の法務局等で国籍離脱届を提出する
③日本の役所に国籍喪失届を提出する

①外国にて必要な手続きを行う

多重国籍で外国籍を選択される場合、外国の法令により、外国での手続きが必要となる場合がございます。外国の法令を確認頂き、手続きが必要となる場合、その手続きを行います。

②日本の法務局等で国籍離脱届を提出する

外国籍を選択する際に、まず法務局等にて国籍離脱届を提出する必要があります。

国籍離脱届
国籍離脱届
国籍離脱届について

提出先
日本に住所があるか居住している場合
…住所地を管轄する法務局または地方法務局

外国に住所があり居住している場合
…外国にある日本の大使館・領事館

手続きの期限
…特になし

必要な書類
…国籍離脱届、戸籍謄本、外国国籍の確認ができる書類(旅券、出生証明書など)、住所を証する書類、外国語で作成されている書類の訳文
※15歳未満の方が国籍を離脱する際は法定代理人の方が戸籍謄本など資格を証明する書類が必要となります。

費用
…無料

備考
…国籍を離脱しようとする本人が15歳以上の場合、本人が法務局等に出頭する必要があり、15歳未満の際は法定代理人が出頭する必要があります。

国籍離脱届の記入例はこちらからダウンロードできます。

③日本の役所に国籍喪失届を提出する

法務局等にて国籍離脱届を提出した後に、役所に国籍喪失届を提出する必要があります。

国籍喪失届
国籍喪失届について

提出先
…本籍地または所在地の役所

手続きの期限
……国籍喪失の事実を知った日から1か月以内
※事実を知った日に国外にいるときは3か月以内

必要な書類
…国籍喪失届書、国籍の喪失を証明する書類、外国語で作成されている書類の訳文、認印
※本籍地以外の役所で手続きをする際は、戸籍謄本が必要となる場合がございます。

費用
…無料

備考
…届出書には本人(15歳未満の際は法定代理人)、配偶者又は4親等内の親族に記入頂く必要がありますが、役所によっては郵送、本人以外で提出できる場合がございます。

国籍喪失届の記入例はこちらからダウンロードできます。

二重国籍の人の名前を統一するには?

二重国籍の人は、それぞれの国で名前があります。
そのような人が外国と日本の名前を統一する方法は次の通りです。

二重国籍者の名前を統一する方法

①外国の名前を変更し、日本の名前で統一する
②日本の名前を変更し、外国の名前で統一する

①外国の名前を変更する方法については、国籍をお持ちの外国の担当機関にて手続きの方法をご確認ください。

②の方法で日本の名前を変更する場合、役所での届出のみで変更できる場合と家庭裁判所の許可を得た後に役所へ届出をしないといけない場合の2種類の方法があります

役所だけの手続きで名前が変更できるケース

①外国人と婚姻後6か月以内に外国人の姓(氏)に変更する場合
②外国人と離婚して3か月以内に元の姓(氏)に変更する場合

※下の名前を変更するには必ず家庭裁判所の手続きが必要となります。

家庭裁判所と役所の手続きが必要になるケース

上記①②以外で苗字・名前を変更する場合

市役所への変更届出は提出すれば問題なく変更されますが、家庭裁判所の手続きが必要となるケースは、申立をしても必ず名前の変更が認められるというわけではありません。

家庭裁判所での改名手続き(費用・書類・期間・流れなど)について詳細に知りたい方は、どこよりも詳細にこちらの記事に記載しております
【完全版】苗字・名前の改名手続きの流れ!変更許可のポイントは?

家庭裁判所での手続き

どこの家庭裁判所で手続きを行うの?

日本

多重国籍で日本国籍を持つ方の改名手続きは、どの家庭裁判所で行うのでしょうか?

改名手続きする家庭裁判所

原則:申立人の住所地を管轄する裁判所

例外:日本に住所がない場合
→ 日本での最後の住所地を管轄する裁判所

再例外:申立人が日本に一度も住所を置いていない場合
→ 東京家庭裁判所

家事事件手続法:第226条,4条,7条
家事事件手続規則:第6条

住所が日本にない方は、改名許可後の戸籍の変更届を本籍地の役所へ提出することになります。

海外在住の場合、日本に何回行かないといけないの?

飛行機

海外在住の方が、改名申立から改名許可後まで、日本でする必要がある手続きは次の通りです。

日本でする必要がある手続き

①戸籍謄本、住民票等の取得
※日本に在住していない方は、日本に住所があったことを証明する書類も必要になります。
②家庭裁判所への申立
③家庭裁判所での面談
④本籍地役所への名・氏の変更届
⑤パスポートの変更届
⑥パスポートの受け取り

海外に在住している方が名前を変更するために、日本に来て改名手続きをするのは、かなりの負担となります。

弊所にご依頼頂いた場合、日本でお客様にして頂く手続きを次のようにすることができます。

ご依頼頂いた場合、日本でする必要がある手続き

①家庭裁判所での面談
②パスポートの受け取り
※①の面談も省略できる場合があります。

海外在住の日本人の方で、氏・名の変更での労力を減らされたい方は、氏名変更相談センターをご活用ください。

どういった改名理由だと認められやすいの?

外国人

どのような場合、苗字、名前は変更できるのでしょうか?

まず、家庭裁判所が改名を許可するかどうかの一つの判断基準に、次の点を考慮して判断していきます。

改名のポイント

1.改名の動機が正当であり、必要性は高いか
2.改名による社会的影響は低いか

これらの要件を満たしている場合、家庭裁判所の許可を得る可能性が高くなります。

この判断基準を具体的にあげると次のようなものがあります。

外国で使用している名前に変える場合

外国で使用している名前に変更する場合、外国で長年使用していることが分かる資料を提出する必要があります。
具体的な資料の例などは通称名資料や「通称名とは?名前の変更に必要な改名実績や使用範囲などを解説」をご参考下さい。

日本人が婚姻前の旧姓に変える場合

外国人と婚姻された日本人が婚姻前の日本名に変更する場合、それが婚姻中であったとしても比較的に認められやすい傾向にあります。

日本人が婚姻前の旧姓に変更する際のポイント

・職場等で旧姓を使用しているか
・生活する環境で必要性があるか
・その他、日本名に変える必要性があるか

日本人が外国人配偶者の苗字に変える場合

日本人が外国人配偶者の苗字に変更する場合、次のような点が改名理由のポイントになってきます。

外国人配偶者の苗字に変更する際のポイント

・夫婦関係が分かりやすくなるか
・生活する環境で必要性があるか
・子どもがいる場合、子どもの福祉のためになるか

全ての理由に共通して言えることは、通称名の実績があるかということです
通称名の実績が無くても、変更できる場合もありますが、通称名の実績があって悪く働くことはありません。

また、上記の内容はあくまで例です。

個別具体的に申立する理由は変わってきますので、それぞれの観点から改名の必要性を申立理由に記載する必要があります。

必要な書類は?

書類

・申立書

・申立人の戸籍謄本

・収入印紙・郵便切手
こちらをご参照ください。)


※外国籍の方と婚姻している場合

・外国籍の方のパスポートの写し

・外国籍の方の同意書

 

※通称名を使用している場合

・通称名を使用していることが分かる書類

 

※日本に居住していない場合

・日本に最後に住んでいたことが分かる証明書
(除籍された住民票等、日本の郵便物等)

申立書

二重国籍の人が苗字、名前を変更するには、家庭裁判所へ氏、名の変更申立をする必要があります。

申立書は、こちらからダウンロードすることができます。

戸籍謄本

戸籍謄本は、3か月以内に発行されたものを提出します。
海外に在住されている方など、戸籍の取得が厳しい方は、氏名変更相談センターで代行取得することも可能です。

郵便切手・収入印紙

家庭裁判所で氏、名前を変更するのに、必要な費用としては次の収入印紙・郵便切手代のみです。
他に必要となってくる費用はありません。

改名にかかる実費

1.収入印紙800円

2.郵便切手200円~1500円ほど 

※氏の変更場合
3.許可後 収入印紙150円

郵便切手の金額は裁判所によって異なります。

郵便切手の金額を調べられたい方は、「【全国版】改名手続きでの郵便切手金額一覧」をご参考下さい。使用しなかった切手は、手続き後返却されます。

外国籍配偶者のパスポートの写し

外国人配偶者がいて苗字を変更する場合、外国籍配偶者のパスポートのコピーの提出を求められることがあります。
その場合は、パスポートなどの顔写真、お名前が載っている箇所のみコピーして頂ければ、問題ありません。

外国籍配偶者の同意書

外国人配偶者がいて苗字を変更する場合、外国籍の配偶者の方の同意書を求められることがございます。特段、同意書に様式はございません。
こちらで同意書のダウンロードができますので、必要な方はご利用ください。

通称名を使用していることが分かる書類

また、改名後のお名前を実生活で使用されているのであれば、その証拠資料を家庭裁判所へ提出します。
使用実績となる資料としては、裁判所の判断にもよりますが、次のようなものがあります。

通称名の資料実績

・公共料金の明細
・年賀状
・手紙
・結婚式の招待状、席次表(座席表)
・注文書・納品書
・成績表
・卒業証書
・メール
・契約書(契約相手には通称名であることを伝えておきましょう)
・名刺
・会社パンフレット
・新聞、地域紙(自分のことが掲載されているもの)
・健康保険証(会社が通称名で登録してしまうと発生します)

※日本の最後の住所を証する書面

海外に居住の日本国籍の方が、名字、名前を改名する場合、日本の最後の住所地が手続きを管轄する家庭裁判所になりますので、最後に日本のどこに住んでいたかを証明する必要があります。

最後の日本の住所地の市役所に、住民票を請求すれば、住まいは海外でも日本にいた際の住民票は発行してくれます。
ただし、日本の最後の住所地が記載されている住民票が欲しい旨を伝えなければ、単純に海外に住所がある住民票が発行されますので、ご注意ください。

氏名変更相談センターでは、住民票等の取得も代行で対応しております。
必要な方はご相談下さい。

改名許可後の手続きについて

許可後の手続き

無事に改名することができた後はどういった手続きをする必要があるのでしょうか?
一般的には次のような手続きをする必要があります。

改名許可後の手続き

1.戸籍謄本、住民票の変更
※住所が日本にない方は、改名許可後の戸籍の変更届を本籍地の役所へ提出することになります。
2.マイナンバーの変更
3.健康保険、年金の変更
4.パスポートの変更
5.印鑑登録の変更
6.運転免許証の変更
7.銀行等の口座名義の変更
8.クレジットカード等の名義変更
9.不動産登記の変更
10.生命保険、医療保険等の変更
11.車検証、自賠責保険等の変更

改名許可後の手続きについては、こちらで詳細に記載しておりますので、ご参考下さい。
改名許可後の手続きについて

まとめ

以上、二重国籍の方が国籍を選択する方法、姓を変更し名前を統一する方法について記載させて頂きました。

このあたりの内容は、専門的に記載されているものも少ないため、そのような方々のご参考になれば幸いです。

弊所では改名相談を年間2500件以上受けております。
お名前の変更手続きのご相談をされたい方はお気軽にご相談ください。

 

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