通称名とは?

通称名(つうしょうめい)とは、「本名ではない世間一般で使用し、通用している名前」のことをいい、「通名」や「通称」と言われることもあります。

具体的な例で言うと、戸籍上の名前が「田中太郎」という人が会社や友人間で「田中次郎」という名を使用している場合、この「田中次郎」が通称名になります。

日本国籍の人は通称名を長年使用することで、「戸籍上の名前を通称名に変更できる可能性」があります

外国籍の方は、役所に通称名を登録した場合、住民票等の書類に通称名が記載されるようになります。なお日本人の方が役所で通称名を登録することはできません。
外国籍の方の通称登録について(役所HP)
外国籍の方の改名方法について(弊所HP)

戸籍の名前を通称名へ変更するには?

家庭裁判所

戸籍上の名前を通称名へ変更するにはどうすればいいのでしょうか?

戸籍上の名前を通称名へ変更するには「家庭裁判所の許可」を得る必要があります

家庭裁判所での詳しい手続きは「【完全版】苗字・名前の改名手続きの流れ|変更許可のポイントは?」をご参照ください。

通称名は名前変更の
代表的な申立理由ですが、通称名を理由にすれば確実に許可される、というわけでもありません。

通称名へ変更するための要件

次の要件を抑えておく事で、家庭裁判所からの通称名へ変更許可が降りやすくなります。

それぞれ解説していきます。

①通称名を長い年月使用している

通称名を使用し始める際の大事な事

ポイント

通称名を理由に改名する場合、「通称名の使用年数が重要」になってきます。

裁判所は、通称の証拠資料を見て通称の開始時期を判断します。
長年、通称名を使用していたとしても、裁判所に証拠として通称資料を提出できなければ基本的に裁判所は通称実績を認めてくれません。

そのため、通称名を使用し始める際に大事なことは、「Amazonの注文書など、どんな書類でもいいので日付の残る通称名の証拠をできるだけ早く準備していく」必要があります。

ただし、通称名の資料が注文書ばかりだと認められにくいので、注文書などを準備しつつ、徐々に友人、家族、職場などからの書類を揃えていくようにしましょう。

使用年数・実績はどのくらい必要?

郵便4

それでは、通称名をどのくらい使用している必要があるのでしょうか?

目安の使用期間

・苗字…10年以上
・名前…5年以上
※未成年の名前…3~5年

上記はあくまで目安であり、提出する家庭裁判所の取扱いや申立理由により異なります。

一般的に許可が得られやすい期間は苗字であれば10年以上、名前であれば5年以上、学生など未成年であれば3年以上です。

通名の使用の実績が短い状態で変更許可を得るには「名前が読みにくい」「性同一性障害」など別の正当な事由が必要となります

通称名を名乗るための手続きは?

通称を名乗るために、手続きは特に必要ありません。

外国人の方は通称名を役所に登録することができますが、友人や会社などで通称を名乗るために、どこかの機関に届出をする必要はありません。

②通称名を広い範囲で使用している

手続きする人

戸籍上の名前を通称名に変更するには、通称名が広く認知されている必要があります

通称名をAmazonや楽天などのネットショッピングだけで使用していても、周りに認知されているとは言えないので、変更できる可能性は低くなります。

可能な限り、親族、職場、友人、近隣の人たちなど広い範囲で通称名を使用し、証拠となる通称名の宛名がついた書類を準備していきましょう。

裁判所に証拠として書類を提出する場合、会社や友人など最低でも5人以上の人からの資料があることが好ましいです

通称名を使用できる範囲は?

使用できる範囲

使用可…友人、家族
使用不可…役所、銀行、警察など
場合による…学校、会社など

通称名は友人、家族などで使用することはできますが、通称名を登録した外国人でない限り、役所、銀行、警察などの機関では、通称名を使用することはできません。

また学校や職場では通称名を使用できるところも多いですが、戸籍上の名前しか使用できない場合がございます。
学校や職場などで使用する場合、事前に事情を説明し通称名を使用できるか確認をとりましょう。

証拠資料になるものは?

郵便3

証拠というとどこか公的機関が発行した書類でないといけないというイメージがありますが、そのような機関が発行した資料でなくとも問題ありません。

例えば代表的な証拠資料としては年賀状があります。毎年通称名を宛名として年賀状が届いていた場合それが証拠の資料となって参ります。

その他にも裁判所の判断にもよりますが、注文した宛名が通称名になっている納品書であったり、賃貸借契約契約を結ばれた際の賃貸借契約書、宛名が通称になっている公共料金の領収書など証拠となる資料は多岐にわたります。

証拠資料は継続的に使用してきたという証明をする必要があるため、継続的に証拠資料を保管しておきましょう。

通称資料の一例

・公共料金の明細
・年賀状
・手紙
・結婚式の招待状、席次表(座席表)
・注文書・納品書
・成績表
・卒業証書
・メール
・SNS(LINEやFacebookなど)
・契約書(契約相手には通称名であることを伝えておきましょう)
・名刺
・会社パンフレット
・新聞、地域紙(自分のことが掲載されているもの)
・(国民)健康保険証

(国民)健康保険証は一定の要件を満たせば通称名を登録することができます。詳しくは協会けんぽ等のHPをご参考下さい。通称名の銀行預金口座も資料となります。口座名を通称名に変更する方法は、「苗字・名前の読み方の変更方法」をご参考下さい。

必要な証拠の数は?

目安の枚数

各年度…3,4通以上
提出する合計の枚数…2,30通以上

裁判所にもよりますが、通名の資料を提出する場合、各年度ごとに3,4通以上の書類を準備し、合計で2,30通以上の書類を提出することが望ましいです。

引っ越し・スマホの買い替えには要注意!

iPhone

通称名というのは、名乗っていることが分かる資料が無ければ、裁判所は通称名を名乗っていることを認めてくれません。

そのため通称名の資料は、とても重要ですので、引っ越しの際に通名の資料を処分したり、ケータイ・スマホの買い替え時に古いケータイ・スマホを破棄されてデータで保管していた資料を紛失される方がいらっしゃいます。

改名を考えられている方は、引っ越し時に通名の資料もお持ち頂き、スマホの買い替えの際にはデータを移した後に古いスマホを処分するようにしましょう。

③動機に正当性がある

理由

​通称名を使い始めた動機がどういったものでもいいという訳ではありません。
​動機にも正当性が必要となります。

​例えば、姓名判断が動機であったり、過去の犯罪の更生のためなどは厳しい判例結果がでております。

姓名判断というなんら合理的基礎のない通名を単に10年以上使用してきたからといつて、改名の正当の理由はない。

昭和33年7月22日/釧路家庭裁判所/審判/昭和33年(家)361号

暴力団からの離脱、更生は、自助努力により達成すべきが原則であり、名の変更を更生の一助とするのは筋違いというべきであろう。

平成11年1月5日/仙台家庭裁判所/審判/平成10年(家)708号

反対に、正当な動機として認められた判例としては難読な戸籍名を読みやすい通称名に変更したり、近隣に類似の名前の人がいるなどがあります。

戸籍上の名「州璋(クニアキ)」は他人から誤読、誤称、誤記されることが多く難解・難読で社会生活上はなはだしく支障があるところから平易な当用漢字の「吉郎」なる文字を通名として使用してきた場合には、右通名への変更は「正当な事由」がある場合に該当する。

昭和30年12月28日/大阪高等裁判所/第5民事部/決定/昭和29年(ラ)149号

子の名に用いた文字が当用漢字になかったため出生届が受理されず、やむをえず他の名で届け出られたが、同人の名はもとの名で通っており、戸籍上の名を称すると近隣にいる類似の名の子と混同するおそれがあり、現に右文字が当用漢字になっている場合には、通名への変更は改名につき「正当な事由」ある場合に該当する。

昭和29年6月4日/大阪高等裁判所/第3民事部/決定/昭和27年(ラ)13号

​つまり、申立理由を記載する際は、通称名を理由とする場合でも、動機などにも正当性があるか、そしてそれをどのように家庭裁判所に伝えていくかが重要なポイントと言えます。
どのような動機があるかは、「改名理由を徹底解説」もご参考下さい。

④通称名が難読、奇妙な名前ではない

子ども名前

通称名も何でもいいという訳ではなく、認められやすい通称名などがあります。読みにくい名前や難しい漢字などを使っている場合は、許可がおりにくくなります。

通名にとくにむずかしい文字が用いられ、通常人には読みがたい場合は、たとえ通名の使用が長期にわたり、通名がその人の社会生活上その同一認識の標準となつていても、戸籍上の名を通名に変更することは許可すべきではない。

昭和40年4月7日/浦和家庭裁判所熊谷支部/審判/昭和40年(家)800号

戸籍上使用できる文字を名乗る

長年通称名を使用していても戸籍上使用できない文字であれば、その名前を戸籍上登録することはできません。

法務省に「戸籍統一文字情報」というHPがございます。
このHPから戸籍に使用できる文字かを調べることが可能です。
使い方については「戸籍統一文字情報の使い方は?」もご参考下さい。

通称名を名乗るのは違法?

違法か合法か

通称名を名乗ること自体は違法ではありません

判例でも次のような記載がございます。

戸籍法は、各自が戸籍上の氏名以外の関係でこれと異なる氏名を呼称することを別段禁止してはいないのである。

昭和58年10月13日/最高裁判所第一小法廷/決定/昭和57年(ク)272号

ただし、通称名で相手の財産を騙し取るような行為など、使用方法によっては次のような罪に問われる可能性があります。

通称名の悪用により適用されうる罪

・詐欺罪
・私文書偽造罪 
・公正証書原本不実記載等の罪 など

通称名の履歴書で面接するのは違法?

過去の最高裁判例では、次のような判例がございます。

虚偽の氏名等を記載した履歴書及び雇用契約書等を作成行使した行為は、たとえ自己の顔写真が貼り付けられ、あるいは各文書から生ずる責任を免れようとする意思を有していなかったとしても、有印私文書偽造、同行使罪に当たる。

要旨 【裁判年月日等】平成11年12月20日/最高裁判所第一小法廷/決定/平成9年(あ)1227号

つまり、ご自身の戸籍上のお名前以外で履歴書等に記載するのは、違法となる可能性があります。

通称名を使用すること自体は違法ではありませんが、通称名を使用する事でトラブルや違法性が生じる可能性がある場合は事前に了承を得ておくことで、そのような事態を防ぐことができます。

まとめ

このように通称名を理由とする申立でも検討すべき点は多々あります。裁判所に何を伝えるかで変更の許可が認められるかどうか変わって参ります。

弊所では裁判所への申し立てはもちろん、通称実績の積み方についてもサポートしております。
詳しい内容は「通称サポートとは?」もご参考下さい。

通称名を理由に氏・名の変更の申し立てを考えている方、通称サポートを希望の方は是非、氏名変更相談センターにご相談ください。

 

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