・出生届の子供の名前を誤ってしまった

・婚姻届の内容が誤っていた

・間違った内容が戸籍に記載されている

多いことではありませんが、戸籍の内容が事実と異なって記載されている場合がございます。
このような場合、戸籍の内容を訂正できるのでしょうか?

この記事では「市役所や裁判所での戸籍訂正の手続き」について解説させて頂きます。

該当される方は次の記事もご参考下さい。
生年月日の訂正方法を解説
苗字、名前の変更手続きを丁寧に解説

戸籍訂正とは?

戸籍訂正とは戸籍の記載に誤り、漏れ、無効な届出があった場合に、正しい内容へ訂正する手続きの事をいいます。
戸籍を訂正する場合、基本的に役所や裁判所で手続きが必要となります。

戸籍訂正手続きについて

どんな手続きが必要?

役所

戸籍を訂正する手続きには、原則「家庭裁判所の手続き」と「役所の手続き」が必要となります
ただし、役所側の間違いなどにより戸籍を訂正する場合、家庭裁判所の手続きが不要となる場合がございます

手続きの進め方をまとめますと次のようになります。

戸籍の訂正に必要な手続き

① 役所側の間違いなど訂正内容が明らかな場合
…役所が法務局の許可を得て役所で訂正

② ①の場合で訂正が軽微で身分関係に影響がない場合
…法務局の許可なく役所で訂正

③ ①②以外の場合
…家庭裁判所での許可後、申立人が役所へ訂正の届出

おおまかにまとめますと、役所側の間違いにより戸籍の内容が誤っている場合は役所だけでの手続きで戸籍が訂正され、届出人などの間違いにより戸籍の内容が誤ってしまった場合は、裁判所の手続きで認容された後、役所に届出をすることになります。

また裁判所で行う手続きも内容によって必要となる手続きが異なってきます。

家庭裁判所で必要な手続き

身分関係に影響を及ぼさない戸籍の訂正
…戸籍訂正許可の申立(戸籍法113条、114条)

身分関係に影響を及ぼす戸籍の訂正
…判決による戸籍の訂正(戸籍法116条)
※具体例…親子関係不存在確認の訴え、養子縁組無効確認の訴え など

親子関係や養親養子など身分に関する内容を訂正する場合、そもそもの親子関係が本当にないのかなどを判断する必要があるため、戸籍訂正許可の手続きではなくなります。

ただし当事者同士が同意している場合で戸籍訂正許可の申立で問題ないなど、手続きの進め方が煩雑なところもあるため、ご不安な方は、どの進め方をすればいいのかを裁判所へ確認するのも1つの方法です。

この記事は主に戸籍法113条、114条の戸籍訂正許可の申立手続きについて説明しております。

なお戸籍法には次のように記載されています。ご興味のない方は読み飛ばされて問題ありません。

戸籍の記載が法律上許されないものであること又はその記載に錯誤若しくは遺漏があることを発見した場合には、市町村長は、遅滞なく届出人又は届出事件の本人にその旨を通知しなければならない。ただし、戸籍の記載、届書の記載その他の書類から市町村長において訂正の内容及び事由が明らかであると認めるときは、この限りでない。
②前項ただし書の場合においては、市町村長は、管轄法務局長等の許可を得て、戸籍の訂正をすることができる。
③前項の規定にかかわらず、戸籍の訂正の内容が軽微なものであつて、かつ、戸籍に記載されている者の身分関係についての記載に影響を及ぼさないものについては、同項の許可を要しない。
④裁判所その他の官庁、検察官又は吏員がその職務上戸籍の記載が法律上許されないものであること又はその記載に錯誤若しくは遺漏があることを知つたときは、遅滞なく届出事件の本人の本籍地の市町村長にその旨を通知しなければならない。

戸籍法 第二十四条

戸籍の記載が法律上許されないものであること又はその記載に錯誤若しくは遺漏があることを発見した場合には、利害関係人は、家庭裁判所の許可を得て、戸籍の訂正を申請することができる。
届出によつて効力を生ずべき行為(第六十条、第六十一条、第六十六条、第六十八条、第七十条から第七十二条まで、第七十四条及び第七十六条の規定によりする届出に係る行為を除く。)について戸籍の記載をした後に、その行為が無効であることを発見したときは、届出人又は届出事件の本人は、家庭裁判所の許可を得て、戸籍の訂正を申請することができる。

戸籍法 第百十三条、第百十四条

家庭裁判所の手続きについて

それでは家庭裁判所ではどのような手続きが必要なのでしょうか?
ここでは戸籍訂正許可申立の手続きの流れを説明させて頂きます。

誰が手続きできるの?

夫婦3

家庭裁判所で戸籍の訂正手続きができる人は、次の通りです。

戸籍訂正許可

・戸籍の記載につき身分上又は財産上の利害関係者
・戸籍の届出人
・戸籍に記載された本人

※申立人が15歳未満のときは,親権者等の法定代理人が手続きをします。

戸籍訂正の許可を行える人の範囲は利害関係人も含めますので、申立ができる人は広い範囲になります。
利害関係人には含まれない判例として次のようなものがございます。

戸籍訂正許可審判に対し即時抗告を申し立てうる「利害関係人」とは、訂正が許可された戸籍の記載が正確であることにつき法律上の利益を有する者をいうと解すべきであり、復氏のように身分関係に影響のない届出・申出行為に基づく戸籍記載の訂正許可の審判においては、当該戸籍に記載されていない者または分籍等により当該戸籍から除籍されている者は右「利害関係人」に含まれない。

昭和54年11月29日/東京高等裁判所/第2民事部/決定/昭和54年(ラ)1230号

どこで手続きするの?

裁判所

戸籍訂正許可の手続きを行う家庭裁判所は、訂正する戸籍の本籍地を管轄する家庭裁判所です。

申し立てをする家庭裁判所が、どちらになるかは「家庭裁判所のHP」をご参考下さい。

費用・料金は?

お金

家庭裁判所での費用・料金は次の通りです。

改名にかかる実費

1.収入印紙800円
2.郵便切手1000円~3000円ほど 

※家庭裁判所での実費です。交通費、郵送費、戸籍謄本代などは除いております。

郵便切手の金額は裁判所によって異なります。

戸籍訂正許可申立郵便切手の金額(1人分)
東京家庭裁判所500円×2枚
84円×6枚
10円×5枚
5円×2枚
名古屋家庭裁判所500円×2枚
84円×8枚
50円×1枚
20円×1枚
10円×2枚
5円×1枚
2円×2枚
大阪家庭裁判所500円×2枚
84円×15枚
50円×2枚
10円×5枚
2円×6枚
1円×10枚

郵便切手の金額を調べられたい方は、管轄家庭裁判所にご連絡頂き、「戸籍訂正許可の郵便切手の金額を教えて頂きたいのですが」とお伝え頂く事で教えて頂けます。使用しなかった切手は、手続き後返却されます。

必要な書類は?

書類

戸籍訂正申立時に家庭裁判所へ必要となる書類は次の通りです。

①申立書

戸籍訂正許可申請書
申立書記載例
⇧クリックして拡大

こちらは家庭裁判所にあげられている申立書の記載例です。

戸籍訂正許可申立書の1P目については、記載例に沿って記載して頂ければ作成できますが、2P目の申立理由については慎重に作成する必要があります

②戸籍謄本

申立時には訂正すべき戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本を提出します。

戸籍謄本については、発行から3か月以内のものを求められます。

また、本籍地が遠方の方は、戸籍謄本を郵送で取得することも可能です。
「○○役所 戸籍 郵送」とインターネットで検索して頂ければ、請求方法が出てきます。
海外に在住されている方など、郵送ですら厳しい場合は、氏名変更相談センターで代行取得することが可能です。

③戸籍訂正に関する資料

訂正する内容によって資料が異なってきます。

申立人が訂正すべき戸籍に記載されていない場合
この場合、申立人が利害関係者であることが分かる資料(申立人の戸籍謄本など)を提出する必要があります。

訂正申立後の手続きについて

申立後にすることは?

家庭裁判所

家庭裁判所へ戸籍訂正許可の申立後にする事は次の通りです。

必ずどちらも行われるという訳ではありません。

書面照会だけ、審問、参与員の聴き取りだけ行われる場合もあれば、全て行われる場合、何も行われない場合もあります。

管轄の家庭裁判所が、どの手続きをするかを決めていくので、申し立てをした後は、家庭裁判所から連絡を待ちしましょう。

書面照会、審問とは?

書面照会(照会書)とは?

照会書1
照会書2
照会書3
ー照会書の見本ー

こちらは氏の変更申立時の照会書ですが、戸籍訂正許可申立も同じように家庭裁判所から申し立てに関する質問が送られてくる場合がございます。

裁判所宛の返信用封筒も付いており、内容を記載し一定の期日(基本的には2週間)までに返送します。

氏・名の変更申立の内容ですが照会書については「家庭裁判所から来た照会書・回答書の書き方と注意点
」もご参考下さい。

審問・参与員の聴き取りとは?

期日通知書
ー期日通知書ー

戸籍訂正許可申し立てをすると、家庭裁判所から面談のための期日調整の連絡がある場合がございます。その日程が決まると上記のような書類が送られてきます。

審問・参与員の聴き取りとは、申立人や法定代理人が家庭裁判所に出廷し、参与員・裁判官から確認したい内容について質問され、それに答えていく手続きの事をいいます。

聞かれる内容やどのような点に注意すべきかは、氏・名の変更申立の内容ですが「裁判所の面談で一番注意する事と質問内容」をご参考下さい。

期間・日数は?

一般的には、申立後、1.2週間ほどで家庭裁判所から連絡がありますが、忙しい家庭裁判所では何カ月も連絡がない場合もあります。
不安な方は家庭裁判所に進捗の確認をすることも可能です。

家庭裁判所での改名手続きの進め方は、次の4パターンあります。

戸籍訂正許可申立後の家庭裁判所での手続き

①書面照会のみ
②裁判所から面談の日程調整の連絡→参与員の聴き取り・審問
③書面照会→裁判所から面談の日程調整の連絡→参与員の聴き取り・審問
④書面照会・審問など無く改名の許可

手続きの進め方にもよって大きく変わってきますのが手続きの期間としては1.2カ月ほどかかる場合が多いです。

結果の連絡方法は?

許可審判書
⇧許可審判書
却下審判書
⇧却下審判書

書面照会(照会書)、審問等が終わると、面談日当日に結果が言い渡されるか、1,2週間前後で通知されます。

裁判官の戸籍訂正許可申立についての判断を審判と言い、許可されれば許可審判書が、却下されれば却下審判書が通知されます。
却下の場合は、事前に取り下げを催促される場合もございます。

変更許可後、家庭裁判所へ確定証明書を請求する必要があります。確定証明の申請書は、許可審判書と同封されて送付されます。
確定証明書の詳しい内容は「確定証明書とは?いつ届くの?見本・書式付きで手続きを解説」をご参考下さい。

過去の判例

裁判

戸籍訂正許可の事件について公開されている判例の一部を記載させて頂きます。

許可判例

性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律3条1項の規定に基づき男性への性別の取扱変更の審判を受けた者と婚姻した女性が婚姻中に懐胎して出産した子の父の欄を空欄とする等の戸籍の記載につき、同夫婦が戸籍訂正の許可を求めた事案において、特例法の規定に基づき男性への性別の取扱変更の審判を受けた者は、法令の規定の適用について男性とみなされるため、民法の規定に基づき夫として婚姻することができるのみならず、婚姻中にその妻が子を懐胎したときは、同法772条の規定により、当該子は夫の子と推定されるというべきであるから、戸籍事務管掌者が、戸籍の記載から夫が性別の取扱変更の審判を受けた者であって当該夫と子との間の血縁関係が存在しないことが明らかであるとして、子が民法772条による嫡出の推定を受けないと判断し、父の欄を空欄とする等の戸籍記載をすることは許されないとして、戸籍の変更が許可された事例

平成25年12月10日/最高裁判所第三小法廷/決定/平成25年(許)5号

戸籍事務のコンピュータ化に伴う戸籍改製に際し、市町村長が氏名の誤字を正字に改める場合において、事前に本人に対し書面により告知する手続を省略し、表記の訂正を欲しない旨の本人の申出を無視して訂正するなど、本人にそのままの表記で公証される機会を与えたといえないときには、戸籍法118条にいう違法な戸籍の記載がされたものとして、もとの表記への戸籍訂正を許可することができる。

平成19年7月19日/鹿児島家庭裁判所知覧支部/審判/平成19年(家)175号

戸籍の記載事項中出生の年月日欄の訂正の許可を求めた事案において、出生当時の田舎における出生届出の実情や抗告人の生育歴等を勘案すると、抗告人の戸籍の記載をもつて直ちに出生日を認定する資料とはなしえないとし、抗告人の出生の事情に通じた抗告人の義理の叔母の申述および抗告人が戸籍となる月日を出生日と永年信じ、これを社会的関係において使用してきた実績などを総合勘案して戸籍訂正が許可された事例。

昭和51年10月15日/広島高等裁判所岡山支部/決定/昭和51年(ラ)19号

却下判例

妻と亡夫の親族との間の姻族関係の終了は身分上の権利義務に重大な変動を生ぜしめるものであるから、妻の意思に基づかないでなされた亡夫の親族との姻族関係終了届出の無効を理由として戸籍訂正を求めるためには、戸籍法116条により姻族関係存在確認の確定判決または審判を得たうえでなすべきである。

昭和55年4月3日/大阪高等裁判所/民事第5部/決定/昭和55年(ラ)81号

母によりなされた出生届は、旧戸籍法上庶子出生届とは認められないにもかかわらず、戸籍上亡父の子として記載されている者の戸籍の父欄の記載の抹消を求める戸籍訂正は、本人の身分関係に重大な影響を及ぼすものであり、かつ、本人がその訂正に異議を申出ていて、しかもいつたん戸籍を訂正しても死後認知の訴を認容する確定判決により再度訂正されることが予想されるから、戸籍法一一三条に定める手続による戸籍訂正は許されず、同法一一六条の確定判決により戸籍を訂正すべきときに該当する。

平成2年5月11日/仙台高等裁判所/第3民事部/決定/平成2年(ラ)15号

戸籍法113条による家庭裁判所の許可に基づく戸籍の訂正は、戸籍の記載自体から訂正すべき事項が明白な場合、又は戸籍の記載自体からは明白ではないものの、訂正すべき事項が軽微で親族法、相続法上の身分関係に重大な影響を及ぼす虞のない場合に許されるものであって、訂正すべき事項が戸籍上明白ではなく、身分関係に重大な影響を及ぼすべき場合には、同法116条1項により確定判決に基づくのでなければ許されないものと解するのが相当である。戸籍上事件本人の亡母として記載されている者と事件本人との間に親子関係がないとして亡母の弟がした戸籍訂正許可の申立てを却下した審判に対する即時抗告において、本件申立てにかかる戸籍訂正は、事件本人の身分上重大な影響を伴うものであるから許されないとして、原審を維持した事例。

平成11年9月30日/東京高等裁判所/第7民事部/決定/平成6年(ラ)907号

戸籍訂正許可後の戸籍の記載

戸籍訂正の謄本

家庭裁判所の許可を得て、名の訂正をした場合、戸籍謄本には次のように記載されます。

名の訂正後の戸籍謄本の記載

 身分事項:訂正
【訂正日】令和〇〇年〇〇月〇〇日
【訂正事項】名
【訂正事由】戸籍訂正許可の裁判確定
【裁判確定日】令和〇〇年〇〇月〇〇日
【申請日】 令和〇〇年〇〇月〇〇日
【申請人】 〇〇 (父母など)
【従前の記録】
  【名】〇〇〇

※本籍地と違う役所へ届出を提出した場合、次のような文言も記載されます。
【送付を受けた日】令和●年●●月●●日
【受理者】■■市長、■■区長 など

戸籍の訂正許可を得た後に戸籍訂正の届出をした場合、上記のように多くの記載が入りますが、転籍や分籍など新しく戸籍を編製することで、新しい戸籍謄本には上記内容は記載されません。
※編製前の戸籍には記載されたままです。

まとめ

戸籍訂正許可申立の流れをまとめさせて頂きました。

これから手続きをされるの方の参考になれば幸いです。

とても長い文章を読んで頂きありがとうございました。

 

戸籍訂正でお悩みの方は

司法書士事務所エベレストへご相談下さい。

初回相談無料!

 

お問い合わせ