弊所には、次のようなご相談を頂く事がございます。

昨年、条例違反にて前科がつきました。実名報道により、ネット上に自分の名前があるので引っ越しの際に断られたり、就職口も難しい状況です。

自分には過去に大きな犯罪歴があります。出所して現在は真面目に生活しています。最近会社を立ち上げましたが、ネットに名前や事件など載っているためスタッフからその事を伝えられてやめられる事も出てきました。
自分が悪いことは承知してますがこのままでは大変な事になりそうなので削除など考えていますがそれすら金額が高くて手が届かず名前を改名出来るのなら相談したく連絡させて頂きました。

罪を犯された方が、再度の犯罪を目的に改名することは認めてはいけないと思いますが、出所をされた方が、まじめに働かれて家庭を持たれていても、何年も前の犯罪が理由で日常に支障を来すことが多くあります。

このような方々は、過去の犯罪歴を理由に改名ができるのでしょうか?

改名手続きについて

裁判所

前科を理由に名前を変更するには、どのようにすればいいのでしょうか?

名前を変更するためには、家庭裁判所の許可を得る必要があります。

改名手続きの詳細な流れなどは、こちらをご参考下さい。
【完全版】苗字・名前の改名手続きの流れ|変更許可のポイントは?

犯罪歴を理由に改名は認められるの?

裁判

犯罪履歴を理由として、名前の変更は認められやすいのでしょうか?

一般的に犯罪歴を清算することを目的とする名前の変更は傾向としては認められにくい傾向にあります

有罪判決を受け,執行猶予期間中である申立人が,逮捕時に報道された自己の氏名及び顔写真が現在もインターネット上に拡散されているため,就職に不利益であるとして名の変更の許可を求めた事案で,犯罪歴は,企業にとって重要な情報の一つであり,応募者として申告を求められた場合には,信義則上真実を告知すべき義務を負うものであるから,申立人が犯罪歴を企業に知られることで採用を拒否されるなど一定の不利益を受けることがあったとしても,それは申立人において甘受すべきであるから,戸籍法107条の2にいう「正当な事由」があるとは認められない

令和1年7月26日/東京家庭裁判所/家事第4部/審判/令和1年(家)4080号

名前を変更するには、条文上、次の要件を満たしている必要があります。

「名の変更」

正当な事由によって名を変更しようとする者は、家庭裁判所の許可を得て、その旨を届け出なければならない。

根拠条文:戸籍法第107条の2

つまり、名前を変更するには、「犯罪歴を理由に名前を変更することが、家庭裁判所から正当な事由である」と判断される必要があります

そして犯罪歴を清算するために名前の変更をする場合、次のような観点から判断されることがあります。

判断のポイント

・更生を促進する側面
・社会的に支障をきたす側面
(前科の照会ができないなど)

そして家庭裁判所では、更生を促進する側面よりも社会的に支障をきたす側面が強いため、正当な事由がないとして却下判決を下される傾向にあります。

それでは、犯罪歴のある方が改名をする方法は、ないのでしょうか?
時間はかかりますが、通称名の実績を積むという方法があります。

改名の対策:通称名とは?

通称名

犯罪歴があると改名できないのでしょうか?
通称名の実績を積むことで名前を変更できる可能性があります。

通称名(つうしょうめい)とは、戸籍上の名前でない世間一般において使用しており、通用している名前のことをいいます。

通称名に関する詳細な内容は、次の記事を参考下さい。
通称名へ改名するには?実績資料など名前変更で大事なポイントを解説

対策について要約しますと、戸籍上とは違う名前(通称名)で周りから認知してもらい、その通称名で長年、認知されていることが分かる資料を保管して頂き、その資料が十分に集まった後に改名の申立をする方法です。

この方法を行うことで改名を認められる場合が出てきます。

通称名の履歴書で就職面接できる?

通称名の履歴書で就職面接を行うことは、非常に注意が必要です。
過去の判例を掲載します。

虚偽の氏名等を記載した履歴書及び雇用契約書等を作成行使した行為は、たとえ自己の顔写真が貼り付けられ、あるいは各文書から生ずる責任を免れようとする意思を有していなかったとしても、有印私文書偽造、同行使罪に当たる。

【裁判年月日等】平成11年12月20日/最高裁判所第一小法廷/決定/平成9年(あ)1227号

つまり、ご自身の戸籍上のお名前以外で履歴書等に記載するのは、違法となる可能性があります。

ですので、通称名の使用する際は、トラブルや信頼関係が損なわれてしまう可能性はありますので、事前に通称名を使用することの了承を得ておくことが重要です

改名申立をしても問題ない?

通称名の実績がない状態だと、名前変更の申し立てはしない方がいいのでしょうか?

仮に通称名の実績が短い状態でも名の変更申し立てをすることは可能です。
また申し立てが却下された後、通称名の実績を長年積んだ名前変更申し立てが、前回の却下判決で影響が及ぶとは考えにくいです。

つまり、最初の名前の変更の申し立ての理由を、更生及び通称とし、仮にその申立てが認められなければ、通称の使用実績を伸ばし、次回は通称のみの申し立てをすることが可能です。

インターネットの書き込みの対策

うわさ

また、一般的に有罪判決後、執行後の『前科』の公表はその公表が社会的な意義が認められる場合などを除き、プライバシーの侵害となります。

そこで、犯罪歴のある方が更生するための対策として、忘れられる権利を主張することもできます。

​忘れられる権利とは、インターネット上にある個人情報を、Googleなどの検索結果から削除してもらう様に検索事業者に要請する権利のことをいいます。

今現在ではGoogleで削除リクエストを受け付けておりますので、まずは支障をきたすような検索結果はそちらに請求してみましょう。

ただし、認めれたとしてもGoogleの検索結果からそのサイト自身が排除されるわけではありません。

他の方法としては、専門業者に逆SEO対策をお願いするなど、費用は多額になる可能性はありますが、専門業者に頼むことである程度の対策を行うことも可能です。

ただし、専門業者に依頼をしても根本の解決にならなかったということもありますので、その点については、ご認識下さい。

まとめ

弊所においても犯罪歴が問題で、就職ができない、子供に悪影響を及ぼしているなどの相談を頂きます。

前科、犯罪歴を理由に改名を考えられている方が、こちらの記事を読んで頂き参考にして頂ければと思います。

なお、改名手続きを考えられている方は、この記事でも記載しました通り、犯罪歴のみを理由に改名することは難しいので、通称名の実績を積んで頂いた後にお問い合わせ頂ければ幸いです。

 

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