・子供が成人したので、旧姓に戻したい

・親の苗字を引き継ぎたい

・元夫が再婚したので、旧姓に変えたい

 

離婚された方が、苗字を変えられたい理由は様々かと思います。

それでは、離婚されて何年も経過した方が、旧姓や婚姻時の姓に変更することは可能なのでしょうか?

この記事は、旧姓に戻す相談を年間200件以上対応をしている司法書士が「旧姓や婚姻時の姓に変更するための方法と手続きの注意点」を説明しております。

旧姓、婚姻時の姓に変えられたい方は是非ご参考下さい。

旧姓・婚姻時の姓のメリット・デメリット

メリットデメリット

旧姓、結婚時の姓のメリット、デメリットをまとめてみました。
苗字の変更手続きをされる前にご参考下さい。

旧姓に戻す場合

旧姓に戻すメリット

・精神的に新たなスタートが切れる
・親の名字を引き継げる 
・元配偶者とその親族に気を使わなくていい  
・親の戸籍に戻ることができる

旧姓に戻すデメリット

・子どもの名字まで変わってしまう ※① 
・旧姓へ変更した後の手続きが面倒 ※② 

※①子供の苗字を変えたくない方は「子供の苗字を変えない方法」をご参考下さい。
※②苗字を変更した後の手続きは「名前変更後の手続きを徹底解説」をご参考下さい。

婚姻時の姓に変更する場合

結婚時の姓のメリット

・子どもの名字が変わらない  
・離婚した事実が名前だけでは知られない  
・旧姓へ変更する手続きをしなくてすむ

結婚時の姓のデメリット

・気持ちのリセットが難しい  
・元配偶者とその親族から旧姓への変更を促されることがある  
・再婚した際に元々の名字を名乗れなくなる 

詳細な説明は「旧姓・婚姻時の姓のメリットデメリットを丁寧に解説」に記載しておりますのでご参考下さい。

苗字変更に必要な手続きは?

旧姓・婚姻時の姓に変更する場合、役所の手続きに加えて家庭裁判所の手続きが必要となる場合がございます

役所の手続きのみ必要な場合

①離婚した際に旧姓に変更する場合
②離婚日から3か月以内に旧姓から婚姻時の姓に変更する場合
③配偶者の死亡後、旧姓に戻す場合(期限なし)

役所と家庭裁判所の手続きが必要な場合

①離婚日から3か月以降に旧姓から婚姻時の姓に変更する場合
②婚姻時の姓から旧姓に変更する場合 ※

※婚氏続称届を提出し婚姻時の氏を選択された方が旧姓に変更する場合、離婚日から3か月以内であっても家庭裁判所の手続きが必要となります。

「役所」では届出をすれば簡単に苗字を変更できますが、「家庭裁判所」で苗字を変更するために一定の条件を満たす必要があります

親が苗字を変更すると子供の苗字はどうなるの?

苗字

親が苗字を変更した場合の子供の苗字はどうなるのでしょうか?

離婚と同時に旧姓等に変更する場合

親が離婚と同時に旧姓に戻すような場合、子供の苗字は自動的には変更されず子供は元の戸籍に残ったままとなります。
子供が旧姓に戻した人と同じ苗字にするには「子の氏の変更申し立て」が必要となります。

家庭裁判所の手続きで苗字を変更する場合

一方で離婚後、家庭裁判所の手続きにより苗字を旧姓や婚姻時の姓に変更した場合同じ戸籍にいる全員の苗字が自動的に変更されます
これは子供が成人しているかどうかに関わらず、同じ戸籍に子供がいれば子供の苗字も変更されます。
子供の苗字を変えたくない方は、後述の「子供の苗字を変更しない方法」にて詳しく解説します。


それでは「家庭裁判所」での苗字変更の手続きを説明します。

家庭裁判所の手続き

どこで行うの?

家庭裁判所

苗字の改名の手続きは、住所地を管轄する家庭裁判所に「氏の変更申立」という申し立てを行います

ご自身が申し立てする家庭裁判所がどこになるかは「家庭裁判所の管轄一覧」をご参考下さい。

費用・料金は?

お金

家庭裁判所の「氏の変更申立」にかかる費用・料金は次の通りです。

改名手続きの実費

1.収入印紙800円
 
2.郵便切手200円~1500円
 
3.変更許可後 収入印紙150円

※家庭裁判所での実費です。交通費、郵送費、戸籍謄本代などは除いております。

申し立てをする裁判所によって郵便切手の金額は異なります。
郵便切手の金額は「【全国版】家庭裁判所での郵便切手の金額一覧」ご参考下さい。

郵便切手の金額一例

管轄家庭裁判所郵便切手の金額
東京家庭裁判所500円×2枚
84円×4枚
10円×3枚
5円×2枚
名古屋家庭裁判所500円×2枚
84円×6枚
50円×1枚
20円×1枚
10円×2枚
5円×1枚
2円×2枚
大阪家庭裁判所84円×5枚
10円×5枚

必要な書類は?

書類
必要書類

申立書 
戸籍謄本
収入印紙・郵便切手
同意書(同じ戸籍に15歳以上の子どもがいる場合)

①申立書
氏申立書記載例
申立書記載例 旧姓

こちらは家庭裁判所にあげられている申立書の記載例です。
氏の変更申立書はこちらからダウンロードすることもできます。
申立書の1P目については、記載例に沿って記載して頂ければ作成できますが、申立理由については慎重に作成する必要があります。

②戸籍謄本

戸籍謄本は、発行後3か月以内のものが必要です。
必要となる戸籍謄本の範囲は次の通りです。

旧姓に変更する場合

旧姓時から現在までの戸籍謄本

※最低でも次の戸籍の取得が必要となります。
① 現在の戸籍謄本
② 婚姻期間中の除籍謄本
③ 婚姻前(旧姓時)の除籍謄本
※①②③の期間中転籍されていた場合、更にその間の謄本の取得も必要となります。

婚姻時の姓に変更する場合

婚姻時から現在までの戸籍謄本

※最低でも次の戸籍の取得が必要となります。
① 現在の戸籍謄本
② 婚姻期間中の除籍謄本
※①②の期間中転籍されていた場合、更にその間の謄本の取得も必要となります。

離婚、結婚などによって本籍地を変更している場合は、それぞれの役所へ請求する必要があります。
本籍地が遠方の方は、戸籍謄本を郵送で取得することも可能です。
「○○役所 戸籍 郵送」とインターネットで検索して頂ければ、請求方法が出てきます。
郵送で請求するのが難しい方は、氏名変更相談センターで代行取得することが可能です。

※同意書
氏変更 同意書
⇧クリックして拡大

同じ戸籍に15歳以上の子供がいる場合、その子供の同意書が必要となります。この同意書は筆頭者が旧姓や婚姻時の姓に変更することで子供の苗字も変わることについての同意書となります。
15歳未満の子供や、結婚や分籍届などで、すでに親の戸籍から出ている場合、同意書は不要です。

条件は?

ポイント

旧姓や婚姻時の姓に変更するための条件はあるのでしょうか?
条文上には次のような記載があります。

「氏の変更」 戸籍法第107条

 

やむを得ない事由によって氏を変更しようとするときは、

 

戸籍の筆頭に記載した者及びその配偶者は、家庭裁判所の許可を得て、

 

その旨を届け出なければならない。

つまり、苗字を変更するには家庭裁判所から「やむを得ない事由」があると判断される必要があります
※ただし、家庭裁判所は旧姓への変更について「やむを得ない事由」を緩やかにとらえる傾向にあります。

認められやすい理由は?

OK

やむを得ない事由があると判断されやすくなる理由としては、どのようなものがあるのでしょうか?

旧姓に戻す家庭裁判所の要件は昔と比べ緩やかになりましたが、現状でも理由によっては却下されますのでご注意下さい

却下審判書
↑却下審判書
即時抗告
↑弊所で控訴し許可された審判書

「やむを得ない事由」があると認められやすくなるような理由としては、次のようなものがあります。

認められやすい理由

・子供のために婚姻時の姓を名乗ったが子供が成人した
・職場や近隣の方には旧姓を名乗っている
・両親の家業を継ぐ必要がある

過去の許可判例

次の内容は旧姓への変更が認められてきた判例です。

離婚後15年以上婚姻中の氏を続称してきた抗告人(女性)が、婚姻前の氏への変更を申し立てたが却下された事件の抗告審において、〈1〉抗告人が、離婚に際して婚氏の続称を選択したのは、当時9歳であった長男が学生であったためであるが、長男は既に大学を卒業したこと、〈2〉抗告人は、抗告人の婚姻前の氏である○○姓の両親と同居し、その後9年にわたり、両親とともに、○○桶屋という屋号で近所付き合いをしてきたこと、〈3〉両親と同居している抗告人が両親を継ぐものと認識されていること、〈4〉長男も、抗告人が氏を○○に変更することに同意していることからすれば、本件申立てには、戸籍法107条1項の「やむを得ない事由」があるものと認めるのが相当であるとして、原審判が取り消され、抗告人の氏を○○に変更することが許可された事例

平成26年10月2日/東京高等裁判所/第12民事部/決定/平成26年(ラ)1866号

離婚に当たり婚氏継続の届出をし、その後の再婚で配偶者の氏を称する婚姻届をし、その後再び離婚し再婚前の氏に戻った者が、生来の氏に変更することの許可を求めた事案において、生来の氏への変更を求める場合は、婚姻前の氏と同じ呼称に変更する場合に準じ、それが濫用に当たるものではなく、特に弊害がなければ、これを認めても差し支えないとして、氏の変更を許可した事例

平成11年12月6日/千葉家庭裁判所/審判/平成11年(家)945号

自己の氏を称する婚姻をした妻が、婚姻中に家裁の許可により呼称上の氏を夫の氏に変更し、離婚後再び変更前の氏に戻すことの許可を申し立てた事案について、戸籍法107条1項の「やむを得ない事由」があるとして、申立てを許可した事例

平成7年9月22日/宇都宮家庭裁判所/審判/平成7年(家)153号

認められにくい理由は?

NG3

次のような理由の場合、申立は認められにくいものと思われます。

認められにくい理由

・申立が恣意的(身勝手)なものである
・社会的弊害などを生じるおそれがある

旧姓、婚姻時への氏変更申立で却下になるものもございます。
過去の判例では、どのような場合却下されたのでしょうか?

過去の却下判例

協議離婚後、離婚の際に称していた氏を称する旨の届出をなした者からの婚姻前の氏への変更申立につき、申立までに8か月以上も経過しており、日常生活においてさしたる障害が生じているわけでもなく、旧姓に復した方がよいとする親、兄弟の期待や申立人の主観的事情に基づくものであるにすぎないから、いまだ「やむを得ない事由」が存するものとは認めがたいとして右申立が却下された事例

昭和55年3月3日/青森家庭裁判所八戸支部/審判/昭和54年(家)665号

離婚後子供を引き取る予定で離婚の際に称していた氏を称する届出をした後、子供を引き取ることができなくなり婚氏を称する意味がなくなったというだけでは、戸籍法107条1項の「やむを得ない事由」があるとはいえない

昭和52年8月29日/大阪家庭裁判所/審判/昭和52年(家)2136号

前婚の死亡解消後、復氏届をなさないまま前婚以前の旧姓を通姓として使用してきた亡内縁の夫とともに右通姓を使用してきた内縁の妻およびその間の子が、右通姓をもつて一般社会に認識されていたことはうかがえるが、それだけでは右通姓に変更することを許容すべき「やむを得ない事由」があるとはいえない

昭和41年10月18日/札幌高等裁判所/決定/昭和41年(ラ)39号

期間・日数は?

氏の変更流れ
名古屋家庭裁判所HPより

こちらの内容は、名古屋家庭裁判所の手続きの目安期間です
お住いの管轄の裁判所で、手続きの期間に違いはあります

家庭裁判所の手続き期間

一般的な期間:25日~60日
1.家庭裁判所へ申立準備:1日~7日 ※①
2.家庭裁判所の手続き:7日~30日 ※②
3.変更許可の審判確定:14日 ※③
4.役所の手続き:1日~7日 ※④

※①戸籍謄本の取得、申立書の作成等
※②照会書の提出、審問、審判書の通知等
※③姓(氏) を変更する場合、許可が降りてから14日を経過しなければ変更できません。
※④戸籍謄本の取得、氏・名の変更届の提出等

詳細な流れは「完全版・改名手続きの流れ」「名前変更許可後の手続き一覧」もご参照ください。

どもの苗字はそのままで、親だけ旧姓へ変更するには?

子ども 怒る

子どもが親と同じ戸籍に入っている場合、親が旧姓や婚姻時の姓に変更すると、子どもの名字も変わってしまいます。

親と子どもが別々の名字を名乗るには、次の方法があります。

子どもが20歳未満の場合

・離婚時に、子どもには離婚相手の戸籍に残ってもらう

・親の戸籍に子どもが入籍した後は、子どもに離婚相手の戸籍に再度入籍してもらった後、苗字を変更する

子どもが20歳以上の場合

・子どもが分籍届出を提出し戸籍から出た後に親が苗字を変更する

原則、同じ戸籍にいる人は、筆頭者の苗字が変更されると自動的にその苗字に変更されます。
ですので、親は旧姓に戻し、子どもは婚姻時の苗字を名乗り続けるには、子どもが親の戸籍から出ておく必要があります。

ただし、子どもが親の戸籍から出て(分籍といいます。)、単独の戸籍を作るには子どもが20歳以上である必要があります。

そのため、子どもが20歳未満で親だけ旧姓に戻す場合は、子どもには離婚相手の戸籍に入ってもらう必要があります。

また、離婚相手の戸籍に入るには、「子の氏の変更許可申立て」が必要となり、離婚相手が再婚している場合は、その再婚相手の同意が必要となります。

子の氏の変更申し立ての詳しい手続きは「子の氏の変更申し立て」をご参考下さい。

家庭裁判所への申立後の手続き

裁判所6

家庭裁判所へ「氏の変更申立」をした後は、どのような手続きがあるのでしょうか?
申し立てをした後は裁判所で改名を申し立てした経緯などを聴取される「面談」があったり、郵送で事情聴取する「書面照会」というものがございます。
それぞれ詳しい対策などは「家庭裁判所への申立後にすることとその対策」をご参考下さい。

改名許可後の手続きは?

OK

家庭裁判所から苗字変更の許可が降りた場合、後の手続きは次のような流れになります。

改名許可後の手続きの流れ

①「氏の変更申立」を許可する審判書を受け取る
②確定証明書の申請書を記入し家庭裁判所へ提出する
③役所へ必要書類を持参し「氏の変更届」を提出する

氏の変更許可の審判書を受け取る

許可審判書

家庭裁判所から氏の変更許可がされた場合、許可審判書が発行されます。
これは家庭裁判所で改名申立の面談があったその日に渡されることもあれば、後日郵送で送付される場合もございます。

確定証明書の申請

改名の確定証明書
⇧氏変更の確定証明書

家庭裁判所から変更許可の審判書を受け取った後は、家庭裁判所へ「確定証明書」というものを請求する必要があります。

この「確定証明書」の説明や申請方法については「確定証明書とは?申請手続きを詳しく解説」をご参考下さい。

役所の手続き

氏変更届
氏の変更届

家庭裁判所から「審判書」「確定証明書」を受け取ったら役所へ「氏の変更届」を提出します。

氏の変更届について

提出先
…本籍地または住所地の役所

手続きの期限
…なし(裁判所からはできる限り早くと言われます)
 
必要な書類
…届出書、審判書、確定証明書、認印
※本籍地以外の役所で手続きをする際は、戸籍謄本が必要となる場合がございます。

費用
…無料

※郵送で申請することも可能です。

役所にも「氏の変更届」の用紙はありますが、郵送で申請される方や事前に記入されたい方はこちらからダウンロード下さい。

役所以外の手続き

役所

役所での手続きが完了し、戸籍や住民票の氏が変更された後の手続きにはどのようなものがあるのでしょうか?

改名後の手続き一例

1.マイナンバーの変更
2.健康保険、年金の変更
3.パスポートの変更
4.印鑑登録の変更
5.運転免許証の変更
6.銀行等の口座名義の変更
7.クレジットカード等の名義変更
8.不動産登記の変更
9.生命保険、医療保険等の変更
10.車検証、自賠責保険等の変更

それぞれ詳しい手続きは、「名前変更許可後の手続き」の記事もご参考下さい。

苗字変更後の戸籍(見本)

戸籍謄本

家庭裁判所の許可を得て旧姓・婚姻時の姓へ変更した場合、戸籍には次のように記載されます

氏変更後戸籍
家裁の許可を得て氏を変更した場合

戸籍事項:氏の変更
【氏変更日】令和〇年〇〇月〇〇日
【氏変更の事由】戸籍法107条1項の届出
【従前の記録】(空白)
 【氏】〇〇

それぞれの身分事項には何も記載されず、戸籍事項に「氏の変更」した旨が記載されます。この「氏の変更」の事実は転籍などにより新しい戸籍ができたとしても引き継がれる内容です。

家庭裁判所の手続きではなく、離婚した際の戸籍謄本の見本を確認されたい方は「離婚後の戸籍謄本を見本で解説」をご参考下さい。

子供名前を変更するには?

離婚後、子供の名前を離婚相手が決めたため子供の名前を変更したい、というご相談を頂きます。特に生後間もない赤ちゃんなどであれば改名できる可能性は十分にあります。
変更する方は、「赤ちゃんの名前を確実に改名する方法」「キラキラネームの改名方法」などご参考下さい。

まとめ

旧姓・婚姻時の名字へ変更する際に気を付けることや必要な手続きは様々あります。この記事がそういった方々の参考になれば幸いです。
長文の記事をお読み頂きありがとうございました。

 

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